あの日ラーメン屋にいたオッチャン
仕事のある平日に慣れて特にしんどいという感情もなくなってきたら、
癒しである休日の特別感も薄れてくる。
人生楽ありゃ苦もあるさ。
人生は何事も相対的であり、
苦しみが大きいほど楽しみも大きくなる。
その苦楽を倍、倍、倍として繰り返していければいいが、慣れというものは怖いもので、日常にも感情にも起伏がなくなっていく。
ラーメン屋の4人席に腰掛けてハイボールを頼む。
窓から見える外の空はまだ青いが、雲は薄らと赤い。まだ夏の限定メニューの冷やし中華があるが、ちょっと涼しいそんな季節。
隣には家族が座る。
炒飯や餃子を頼む。子供は棚にある漫画を読む。懐かしい景色。多くの人が昔体験した風景。たまに家族で行くラーメン屋って、そんな感じだったと思う。
その家族に座る俺は、いつか子供たちが思い返す景色の一部になっている。一人で四人席で酒を飲んでいた、あの日のおっちゃんだ。
三十路の俺は立派なおっさんへの入り口に片足を踏み入れている。
ジグソーパズルでいったら、1番はしっこのどうでもいいピース。だけど、端っこのピースにしかない垂直ピースは、一枚のジグソーパズルを完成させるのにとても大事なピース。
そんなジグソーパズルの端っこのピースみたいなオッチャンに俺はなりたい。